夫の部下

夫は部下について悩んでいる。

部下が育たないと困っていた。

 

聞いてみると

その原因は忙しいからだと言う。

 

確かにそうなのだろう。

 

でも忙しすぎるというだけで

育たないということはあるだろうか?

その部下は、そんなに新入社員じゃない。

 

それならば、部下の同僚は?と聞けば

部下の同僚は育っているそうだ。

 

夫からの話だけしか聞けず

夫の職場を見たことがない私には

夫の話から想像するしかない。

 

私は部下を指示待ちタイプだと想像していた。

そして夫の話から想像するに

仕事に消極的な部下、そんなイメージだった。

以前から夫は悩んでいた。

 

少しずつ、少しずつ

話を聞き進めていくと

 

部下は鬱になっているという話が出てきた。

 

なーるほど…

 

カサンドラですね、それは。

 

夫の話を聞いていると部下の印象はこうだ。

 

とにかく面倒なことをしたくない。

 

そんな風に聞こえた。

 

確かにそんな所もあるのかもしれない。

 

だが、そんな人が鬱になるだろうか?

 

鬱になるほど何に悩むのだろうか?

 

面倒な事を避けたい人なら、避けられてる今は結果オーライなのでは?

 

真面目に働いているから悩んだんだ。

 

やろうとしても出来ないから鬱になったんだ。

 

助けてほしくても助けてもらえないから。

困っていることを理解してもらえないから。

 

ただ仕事が忙しいだけで、人は鬱にならない。

人を悩ませるのは人だ。

どんなに忙しくても、人間関係が良好で

達成感を得られたり、人の力になれている

事を実感できたり、

自分に自信を持てるような状況ならば

鬱にならない。

 

家に帰れないとか、寝れないとか

休みがないとかは分からないけど。

 

いわゆる普通の企業なら

 

例えば、上司がキツイとか

 

相談できる人がいないとか

 

孤独な人間関係とか

 

経営困難な状況で先行き不安とか

 

プレッシャーで押しつぶされそうとか

 

原因があるはずだ。

 

夫が務める会社は、寝泊まりもないし

出張族ではあっても

休みもちゃんとある。

今はテレワークもある。

帰宅もそんなに遅くない。

 

部下の鬱の原因は恐らく

夫のコミュニケーションだろう。

 

なにせアスペルガーというのは

頭がいい。

そして仕事もできる。

人並み外れた能力が実際にある。

 

だからコミュニケーションが取れないと

訴えてもスルーされる事がよく起きる。

 

IQが高くEQが低い。

 

共感性が低いということは

相手がどう考えているか?

相手が何に困っているか?

を察することはない。

 

言葉を言葉の通りに受け取り

それを何故言っているのか?

何故今、その話しているのか?

という行動の意味を、言葉の意味を

全く考えない。

 

そしてそれを分かってもらおうと

言葉にして伝えてみても伝わらない。

それがアスペルガーだ。

 

助けて

が通用しない相手だ。

 

冷たいのではない。

助けてほしい現状が理解されない。

 

説明して通じるなら、それは健常者だ。

ただの鈍感か、自由奔放な人だ。

その人達は、言葉にして想いを伝えれば

必ず伝わる。

 

はずなのに

 

伝わらない。

 

どうしていいのか分からない所へ

仕事は投げ込まれる。

 

夫は営業で仕事をバンバン受注してくる。

 

そうもなれば、部下のサポートも忙しくなる。

 

上司である夫へ助けてほしくて聞いてみても

求めている答えとは違う内容の答え。

それを聞いてるんじゃない、と言いたくなるような。

そんな事、上司や社内で言えないでしょうし。

 

では言葉を変えて聞いてみる。

やっぱり答えは的外れ。

 

なら怒ってみる。

相手はもっと怒る。

 

そりゃ言葉の意味だけを受け取れば

怒るでしょうよ。

みたいなやり取りが何度リベンジしても続く。

 

それを周りに訴えても立場上、理解されない。

 

これだから今時は…

若いから我慢を覚えよう…

 

そんな次元の話をしていないのに

どう説明していいのかわからない。

 

イジメられてる訳ではないのは確か。

 

ただ自分が文句ばかり言って仕事を投げ出した

ダメ人間のレッテルを貼られていく。

 

段々なにをしても無駄なのだと諦めたくなる。

投げ出したくなる。

 

でも投げ出しても辛いのは自分。

逃げ場だけがなくなっていく。

 

もう嫌だ。

疲れた。

 

カサンドラの順序だ。

 

想像だけれどそんな風に鬱になったのだろう。

 

可哀想に。

救ってあげたい。

解決策なら、いくらでも提案できるのに。

 

部下はカサンドラになってないかしら?

と夫へ聞いてみると

その一言で、一気に夫は不機嫌になった…

 

ああ、マズイと

何とか取り繕って怒りは沈められた。

 

夫を決して否定している訳ではないこと

そして、どうにも理解しあえないことが

あること

それを乗り越えたら、お互いの為になることは

夫も私で実感済みだ。

 

メリットの方が大きいと判断したのだと思う。

夫は暫く私の言葉について考えている様子だった。

 

きっとこの私の一言が、夫がふとした時に

部下に対する言動を省みることに

繋がるはず。

 

夫よ。

君はすごい人だと知っている。

私には絶対にない強さを持っている。

だから大丈夫。

 

あなたなら乗り越えられる。

 

どうか部下も幸せに

鬱が治って、楽しく仕事ができますように。